十波由真全セリフ集(ToHeart2)

ToHeart2の十波由真の全セリフ集です。(抜けがあるかも)
日付は由真のみ攻略時のものです。別の進め方をすると多少ずれたりすると思います。
(最後の「愛佳シナリオ」の部分は愛佳攻略時、日付は固定)
日付がずれたときにイベント内容などがマイナーチェンジされることがあるようですが、その辺は確認していません。
赤紫文字はXRATEDで追加されたもの(追加途中)

3月2日(火)
朝、校門付近
「ちちちちょっとそこ止まるなあああ!!」

「……」

3月3日(水)
朝、通学路
「ふっ」

3月4日(木)
朝、駐輪場付近
「ふぎゃ!?」

「ひとのおしりに話しかけるな!」

「おしりはしゃべってないっ!!」

「また……」

「またあんたなわけね……」

「誰のせいよ誰の!! 二度も三度も寸前で邪
魔してくれて!! あんたがあたしの前をうろ
ちょろしなきゃ遅刻なんかするわけないでし
ょ!!」

「なに言ってんのよ!! とろとろ移動なんか
してらんないわよ!! 点から点は最短時間!!
 基本でしょ!! そっちこそ駐輪場の前でボ
ッと突っ立って!!」

「そうよ校門の時だって!! あーもう!! ひ
とが行くさき行くさき邪魔ばっかり!!
 ところかまわずボケッとしてるのが趣味な
わけ!? そういうのはよそでやってよ、よそ
で!! それとも先回りしてるの!? こうもタ
イミングよく現れるってどういうこと!? し
まいには三つ子とか四つ子なんて言いだすん
じゃないでしょうね!! あたしに恨みでもあ
るんだったら今ここではっきり言ったらどう
なの!?」

「別にって何よ!? 別にって!! 理由もない
のに人のことつけ回してるっての!? まさか
偶然だなんて言いだすんじゃないでしょうね、
下手な言い訳!! いるよね、そういう奴!! 
頭にマヨネーズひねりたくなるくらい嫌い!!
 このヘンタ……」

「ンタ……あ、あ……」

「とにかくっ!!」

「この借りは後できっちり返してやるか
らっ!!」

昼休みの食堂
「ふふん。まったく、くだらないわね」

「その程度でなにを自慢げにしてるわけ?」

「いいでしょ」

「その挑戦、返り討ちにしてくれるわ!!」

「格の差というものを思い知らせてやる!!
 あたしはこいつよ!!」

「いっくわよぉ、いま必殺の電磁ヨーヨー!」

「どうだ参ったか!!」

「ああって、それだけ?」

「くやしくないの?」

「なぜ!?」

「ぐぬぬぬぬぅ……」

「これで勝ったと思うなよ!!」

「え?」

「え゛っ」

「あ、あの」

「え、あ、その、そんなっ」

「ちょっと!! あんたら、なに他人のふりし
てるの!? こらよそ向くな!!」

「あ、あ、いや、それは……」

「あぁぁうあああ〜〜〜!!
 お助けぇぇええ〜〜〜!!」

3月5日(金)
午前中、体育の時間
「ぶばふっ!?」
(選択肢で3回連続で1以外を選んだ場合以外←ややこい表現)
(最大3回ある選択肢のどこかで1を選んだ場合←簡単そうな表現)

3月6日(土)
授業終了後
「…………」

「そっちもテスト返ってきたの? これで全
部? ふーん」

「……ふふん」

「あんたはどうだった? あたしはさ、今回
ちょーっと調子悪かったんだけどさ」

「え……?」

選択肢:雄二を止める選択肢:何も言わない
「な!?」

「別にどーってことないんだからねっ!」

「勘違いしないでよ、別にどうってこと」

「ち、違うわよ!! そんなことあるわけない
でしょ!!」

「これで勝ったと思うなよぉ〜!」
「おおお前が笑うなっ!!」

「かか勝手に見るなあーーーっ!!」

「ホントに調子悪かったんだから〜〜〜!!」

放課後、校舎内廊下
「誰かにバカにされてる気がして来てみれば」

「ちょっと話があるんだけど」

「いい? あたしはあんたのこと何とも思っ
てないのよ」

「……」

「つまりそういうこと」

「話は終わってないわよ!」

「正直、別にどうでもいいわけよ。あんたが
どこで何をしようとさ」

「最後まで聞けーっ!!」

「あんたとは行きがかり上、妙な具合になる
ことが何度かあったけど、こっちは別に競争
してるつもりなんてさらさらこれっぽっちも
ないんだから」

「あたしはあんたを相手にする気なんてない
っていうか、最初から視界にも入ってないわ
けよ」

「だからいい? またどこかで行き合わせた
としても、わざとらしくあたしに……って、
言ってる側から立ち去るなぁ!!」

「つまり、あたしが上。あんたが下」

「歯牙にもかけてないってこと」

「問題外。対象外。予選落ちさようならぁ」

「だから今後一切、あたしに挑みかかってく
るな!」

「そもそも名前どころか隣のクラスだってこ
とも知らなかったんだから」

「わーわー!! 聞こえない!!」

「わーっ、言うな!」

「とにかく、あたしとあんたは赤の他人。今
も昔もこれからも。わかった?」

「……」

3月8日(月)
放課後、食堂前
「あっ……」

「っ!?」

「あっ!」

3月9日(火)
放課後、食堂前
「……」

「……!」

3月11日(木)
放課後、校舎内廊下
「……?」

「むぅ……」

「何してるのよ」

「それはこっちのセリフよ。ひとのことつけ
回して」

「じゃあ何なのよ。下駄箱に隠れたりして」

「……理由が同じなわけないでしょ」

「何でもない」

「うるさい。さっさと行きなさいよ」

「今日はあんたの相手をしてやる暇はないの」

「するかっ!」

「言っとくけど、あたしはあんたなんかと関
わりたくないんだからねっ」

「あんたなんか許さないんだからぁ〜〜〜!!」

3月12日(金)
放課後、図書室
「……?」

「……!」

「っ!?」

「〜〜〜っ」

4月9日(金)
放課後、駐輪場
「っ!?」

「ひっ!?」

「っっっ!」

「わ、わわっ」

「あうっ!」

「あいたた、何なのよもぉ……」

「あ、あ、あんた……」

「なれなれしく名前で呼ぶなっ! ……やだ
っ、こんな……あれ? ちょっと、は、離れ
なさいよ!」

「もつれてるのよ! 腕とか足とか! さっ
さと離れてよ!」

「ちょちょちょっと、なに赤くなってるのよ、
まさかあんたわざと絡まってるんじゃ……い
やああっ!! 変態!! 離れろどっか行けええ
っ!!」

「ひゃあっ!? どどどこ触ってるのよ!?」

「えっちすけべええっっ!!!」

「や、やだ……こらっ!! 下でなにもぞもぞ
やってんの!?」

「だ、誰もそんな勘違いしてないっっ!!」

「え!? え!? うそ、あたしそんなとこ触っ
てないっ!」

「……」

「なにすんのよバカぁ!!」

「男がもだえるなぁぁ!!」

「そんなこと言ったって、ここに手を突かな
いと起きあがれないんだから!」

「え、うそ」

「まさかあそこにひざとか入っちゃった……?
子孫断絶? ねえちょっと!」

「……」

「きゃっ!?」

「……肩」

「ダメ」

「だいたいそっちが突っ込んできて……」

「……そう。仕返しってわけ。わざわざ自転
車まで用意して」

「逆恨みもいいところよ、このたかあきっ!!
 盗人猛々しい!!」

「下の名前で呼ぶなっ! なれなれしい!」

「女はいいの!!」

「そうなのっ!!」

「何が!?」

「……となみ」

「数字の『十』に、海の『波』」

「わざとらしい」

「違うとは言わせないわよっ!?」

「食堂では罪をあたしに押しつけてトンズラ
こきやがったり!!」

「体育ではあたしの顔に水を噴射したり!!」

「答案の返却では調子が悪かっただけのあた
しをあざけり笑い!!」

「卑怯にもバスを使って自転車のあたしを見
下したり!!」

「あたしが隠れてることを密告したり!!」

「これのどこがわざとじゃないっての!?」

選択肢:はっきり言ってやる選択肢:とぼけてみる
「え?」

「えっと……わかればいいのよ、うん。
わかれば」

「これからはせいぜい心を入れかえることね」

「あー、もうわかったわよ。あたしだっ
て鬼じゃないんだから。いつまでそんな格好
してるの、ひとが来たらみっともないじゃな
いの」

「だから言ってるでしょ、しつこいわね。あ
たしそういう男は……」

「きら……?」

「な、なによ、急に変な笑い方して」

「それがどうしたって……」

「な、な、な……」

「なななんですって〜〜〜!!」

「……いるよね」

「いるよね、そういう奴」

「ひとの言うことにはまるで耳を貸さず、自
分の都合だけ押しつけてくる」

「そんな奴に限って、恩着せがましい顔する
のよね」

「そういうの、踏みつぶしたくなるくらい嫌
い」

「局部的に」

「河野貴明……」

「よおおおっく聞けええええっっっ!!!」

「わっ!?」

「き、き、きけ、きけ……」

「は、は、はかったわね」

「あたしにこんな赤っ恥を……」

「これで勝ったと思うなよぉ〜〜〜!!」
「すっとぼける気!?」

「あっ、逃げるかっ」

「ふん、あたしだって別にどうでもいいんだ
から! 勝ったの負けたのなんて!」


4月10日(土)
放課後、校門前
「ふふ、今度見かけたらその顔にタイヤめり
込ませてやると言っといたはずよ!!」

「さあ、今日こそ白黒はっきりつけてやるっ
っ!!」

「どちらの言い分が正しいか」

「正義は勝つ」

「競争?」

「正義は勝つ!!」

「と、見せかけて」

「まずはお前の顔にタイヤの跡!!」

「勝てば官軍!!」

「……」

「よし、下のバス停まで競争よ」

「河野貴明!! 逃げるとは卑怯なり!!」

「俺の屍を踏み越えていけ!!」

「隙を見せるお前が悪い!!」

「きゃっ!?」

「ぐぬぬぬぅ……河野貴明の分際でちょこざい
いなっ!」

「そのツラをブロックタイヤで踏みつけてや
る!! 話はそれからよ!!」

「あわわわぅぅうあっ!?」

「……ふぎゅ」

「おおお、おならじゃないわよ!!」

「……」

「く……くくっ……」

「はっ!?」

「あああっ!? タイヤの跡!!」

「や、やったなぁ……」

「これで勝ったと思うなよぉ〜〜〜!!」

4月12日(月)
放課後、ゲームセンター
「そう……ここまで追ってきたわけね」

「いいでしょう、この勝負……
受けて立つ!!」

「ふははははーっ、まいったか!!」

「あははははーっ!! どう? 腕の差っての
を思い知ったぁ?」

「次、どの技でトドメ刺してほしい?」

選択肢:無敵技選択肢:飛び道具選択肢:バックジャンプ
「おーほーほー、ちょっとくらい反撃してく
んないと面白くないんだけど」

「ほほほー、負け惜しみ? 今の負け惜しみ
だよね?」

「お?」

「うふふー、何度でもかかってきなさーい」
  「うそっ!?」

「がああああっ!!」

「今のボタンがへこんでたのっ!!
 もっかい!!」
「あっ!?」

「あああ、ガードしてるのにっ!!」

「ふぅぅざけるなああっ!!
 開始10秒で半分以上も減らされるなんて
納得できるかっっ!!」

「再戦を要求する!!」


「今のハメだ!!」

「ハメ禁止!!」

「きーっ、卑怯者!!」

「あたしはいいのっ!!」

「あぅああっ!? 今のなに!? ガードしてた
はずなのに!?」

「なしなしっ!! それもなしぃぃ!!」

「ぅぅ……最初の入れて36回……」

「19対18のはずだぞこんちくしょお……」

「いや、違う」

「基本だ」

「とにかくっ」

「図に乗るな」

「これで勝ったと思うなよお〜〜〜!!」

「はかったなあ〜〜〜!!」

4月13日(火)
放課後、2階廊下
「貴明死ね!!」

「ちっ、カンのいい奴め」

「教室」

「とにかくっ!! ここで会ったが
百年目!!」

「だからさっさと成敗されろぉ!!」

「……」

「あ、あれっ」

「運がよかったわね!!」

4月14日(水)
放課後、2階廊下
「探してたのよ」

「今日こそ白黒はっきりつけてやる!!」

「ふふ……決着をつけるといえばやっぱりス
ポーツよね」

「何してるのよ、さっさと武器を取れば」

「ううん、初めて」

「サービスエース」

「うりゃあ、スマッシュエース!!」

「さっきからロブばっかし!!」

「はぁ、はぁ……この、さっさと負けろ!!」

「食らえっ、ばぁにんぐふぉぉる!!」

「あら?」

「な、なぬ!?」

「わ、わ、ふわぁ!?」

「はぁ、ふはぁ……な、なかなかやるわね」

「きょ、きょうのところはこれで勘弁してあ
げる」

「もう、勝負はどうでも、
 よくなってきた……」

「「……え゛っ」」

4月15日(木)
放課後、ゲームセンター
「ふふふ……」

「あんたの手の内なんかお見通しよ」

「無事に帰れるとは思わないことねっ!」

「気分よ、気分。細かいトコ突っ込むな」

「河野貴明、今までさんざん調子こいてくれ
たけど、あんたもこれで年貢の納め時よ!」

「だまらっしゃい! 今日は麻雀で勝負よ!」

「東風戦よ!」

「びびんじゃないわよ!」

「ありえないいいっっ!!」

「ばふっ!?」

「さっきからおかしいわよぉ〜〜〜、この対
戦台ぃ〜〜〜。役満がぽんぽんとぉ〜〜〜!」

「ぬ、脱げとか言うつもり!?」

「いや脱ぐ!! 絶対脱ぐ!!
 ここで脱ぐ!!」

「そこまで言われて黙ってられるかっ!!」

「そういうことなら今のはなし。再戦よ!」

「これ」

「早くしろーっ、おくしたかーっ」

「おら、もう始めてるぞ! さっさと乱入し
てこい!」

「なにやってんのよ!」

「……どういうこと?」

「ええっ!?」

「ちょ、ちょっと待ちなさいって、すぐに済
むから……わっ、なにこれ、ちょー簡単!?
終わらない、終わらないよぉ〜!!」

4月16日(金)
午前中、休み時間
「1億3245万6089点」

「1億3245万6089点」

「いぃちおくさんぜんにひゃくよんじゅ
うごまん……ろぉくせんはちじゅうきゅうて
ん……」

「いぃぃちおくさんぜんにひぃあくよんじ
ゅーごまん……以下略」

放課後、下駄箱
「ぐっ、河野貴明!?」

「いや、違う」

「だから違う」

「そんな卑怯な真似、あたしがするわけない
でしょ!!」

「別に」

「何も隠してない」

「隠してないって言ってるでしょ!」

「別に」

「……」

「うわぁぁあああっっ!!」

「大丈夫、ほどよく殺してあげるから!!」

「つっ!」

「ふー、ふー、ふー」

「裏山の神社の近く」

「うちの学校のOB」

4月17日(土)
放課後、食堂
「デストラひとつ!!」

「「あ」」

「デストラ山盛り!!」

「ふっ」

「っ……!?」

「ふ……ふふ……」

「ふ、ふ、ふ、ふふふふふふ……」

「くっ……!」

「ごっくん」

「どーだぁ、これで参ったか!!」

「負け惜しみ負け惜しみ!!
 うはははは……あ゛っ?」

「あーっ!?
 のののどが焼けるるぅぅ〜〜〜!?」

「ひょ、ひょ、ひょれれひゃっらほおもひゅ
ひゃほー!!」

4月19日(月)
昼休み、食堂
「「あっ」」

「ふふん」

「……」

「……ふん」

「あっ」

「す、捨てるの……?」

「……そう」

「……」

「べべ別にそんなこと聞いてないわよっ」

「あっ!?」

「こ、これで勝ったと思うなよぉ!!」

放課後、ゲームセンター
「河野貴明!! 二度あることは!?」

「だあーっ、今のなに!? なんであんな低く
空中ダッシュできるの!?」

「きいーっ、でーきーないーっ!!」

「いま教えろ!!」

「このぉ、食らえっ岩石!! ピヨってしまえ
ぃ……うわぁあああ!? ビームなし!! こら
やめろお!!」

「言われなくてもっ! 今すぐつぶーす!!」

「うわっ!? 今のなに!? 何か伸びてきた!!」

「卑怯者!!」

「こっちが飛んでくるように仕向けたのを言
ってるの!!」

「ぎゃあっ、やめやめビームやめろお!!」

「……」

「とっくに終わったわよ」

「残り時間、ゲージも使い尽くしてたっぷり
叩き込んでやったさ、でもあとちょっとで間
に合わなかった。あんた、追いつけないの計
算して無防備でいたな!?」

「あー、ダメ! 格ゲーは性に合わない!」

「よし、次はシューティングだっ!」

「あんた幅とりすぎっ!」

「ちょっと! こっちすり寄ってくんなっ!」

「か、体くっつけてくるなぁ!! もっとあっ
ち行け!!」

「バカっ!! 変態!!
 すけべ痴漢んんんっっ!!」

「……ふぅ」

「うん、連射のしすぎで指がつりそう」

「それは邪道」

「当たり前よ」

「だれがクリアしたって言ったのよ」

「に、2面」

「ま、まんなかくらい」

「……」

「だめだめだめーっ!! 白黒はっきりつける
ためだったのにこれじゃだめだーっ!」

「真の決着はあれで決める!」

「んじゃ、あたし先攻」

「あああ〜っ!! 無理無理、こんなの絶対無
理!!」

「コーヒーだからって威張るんじゃない」

「あ、紐が切られてる」

「きしし」

「修行が足らんな」

「これで勝ったと思うなよぉ〜〜〜!!」

4月20日(火)
昼休み、食堂
「う」

「ゆゆ指さすなっっ!」

放課後、駐輪場
「ありえない」

「ありえないし……」

「でしょ!?」

「たまたまこの前を通りかかった時、ボール
がひとつあの上にのっかったのよね」

「でも、そのボールは落ちてこなかったわけ
よ」

「昼休み」

「そんなわけないでしょ」

「午後の間中、ずっとそのことが気になって」

「……なんで?」

「気にならないの?」

「のぼる」

「なんで?」

「一応ってどういう意味だ!!」

「お?」

「こっち向くな」

「これに引っかかってた」

「「あ」」

「結局、お前自身が原因だったわけか」

「あたしのことはめた……?」

「返してくる」

「どうして?」

「むぅ……」

「どうしてあたしがっ」

「う……」

「だいたい、ボールのことだったらあんたの
友達がきっちり叱られたんでしょ!? わざわ
ざ見つけて届けたあたしがどうしてまた怒ら
れなくちゃならないのよっ!!」

「そんな言い方で納得できるかっ!」

「あ、それ!?」

「どうして……」

「それ、どうするの?」

「ピサの斜塔みたい」

「いつか倒れてきそう」

「うふ」

「もし倒れてきたら電線も切れるよね」

「そうなったらどのくらいの範囲が停電する
かな」

「パーッと街の灯が消えてくとこ、見てみた
いね。夜がいいね」

「……なぬ?」

「それはあたしの勝ちでいいのかな?」

「で、何かってなに?」

「あれ」

「おい財布、さっさとついて来い」

「やっぱりアイスはカップじゃないと」

「棒つきなんて、どれも乳脂肪分が少なくて
アイスと呼べる代物じゃないわ」

「棒つきは所詮邪道。子供の食べものよ」

「……っ」

「べ、別に」

「……棒をかじるな」

「別に」

「う゛い゛い゛い゛い゛〜〜〜あ゛あ゛あ゛
〜〜〜っっっ!?」

「こここれで勝ったと思うなよぉ〜〜〜!」

4月21日(水)
放課後、3階廊下
「うわぁあ!?」

「あつつぅ……う゛っ!?
 うわぁ……やっちゃったぁ……」

「うわ、わ、わぁ……」

「……」

「おーーーいっ!」

「奇遇じゃないのぉ〜」

「ちょっと来てよ」

「いいもの見せてあげるから」

「そんなの後でいいじゃない」

「いいから」

「いいから来なさいって。せっかくいいもの
見せたげるって言ってるのに」

「いいからいいから」

「やだぁ、こんなところにワックス入れたバ
ケツなんて誰が置いたのぉ〜?」

「え?」

「うそ、なんで?」

「そんな、うそ……どこに……」

「あぅわああぁあ!?」

「う、うう……」

「ぐっ……ぐすっ、うぅ……」

「泣いてなんかいない!」

「こっち見るなぁ……」

「もうあっち行けぇ!」

「え……?」

「教室に、体操服が」

「たかあき……?」

「教室に入って取ってきたの?」

「……変態」

「あっち向け!」

「べ、別に出ていけなんて言ってないんだか
らっ」

「お待たせ」

「な、なによ」

「やーらしい顔してないで、さっさと行くわ
よ!」

4月22日(木)
放課後、駐輪場
「……ん」

「あのさ」

「これから……ヒマ?」

「なな何想像してるのよっ!」

「たまたま映画のタダ券があったから。
その……昨日のお礼」

「勘違いしないでよ、借りを作るのが嫌なだ
けなんだからっ。都合が悪いなら別にいいわ
よ、無理にとは言わないから」

「やっぱりダメ。おごられろ。このままじゃ
あたしが気持ち悪い」

「体操服代とまではいかないけど、それはい
いでしょ。あたしが頼んだわけじゃないから」

「買ったんでしょ? 着てみてすぐにわかる
わよ。タグも違ってたし」

「体操着の端に名前入れるところがあるでし
ょ」

「当たり前じゃないの、教室に戻ったら体操
服あるしさ。着心地も違うし」

「だから、おとなしくおごられなさい」

「いい? これで貸し借りなしだからね」

「知ってるわよ」

「そのくらいわかるわよ」

「言いたくない」

「……」

「うううるさいわね! わかってるって言っ
てるでしょ!」

「なに言ってるの、招待券だから映画館は決
まってるの。こっち」

「さっさと観てさっさと帰る。のろいことは
牛しかしない!」

「開演時間が近いのよ! ただでさえ人が並
んでるんだから!」

「どっちでもいいけど」

「かまわないわよ、招待してるのはあたしだ
し」

「え、まじ?」

「そうなの?」

「それじゃあ……」

「何よ、今さら臆してるの?」

「じゃあ何よ」

「どうってことないわよ、こんなの」

「そうよ。どうってことないし」

「何だか……」

「あたし達、浮いてるよね」

「なにそれ?」

「げっ!? うそ!!」

「冗談じゃないわよ! あんたなんかと、そ
の、こ……恋人……ああっ、もう耐えられな
いっっ!」

「他の奴を誘えばよかった」

「何よ」

「一人ぶん、空いたじゃないの」

「おごるとは言ったけど一緒に見るとは言っ
てないんだから」

「ほら、結局一緒だったじゃないの」

「すご……」

「はあ……」

「ありえない」

「そう思わない!?」

「あ、あんなの……し、した、し、し、舌と
舌なんて……」

「信じられないって、ホントに! どこが嬉
しいわけっ?」

「ここ興奮!? やややらしいっっ!! あたし
興奮なんかしてない!!」

「ありえない……」

「なんであんなことしたんだろ」

「ううん、あれとそれの合体」

「いや、違う、そうじゃなくて! 最初にそ
んなことした人は、どうしてそういうことを
しようと思いついたんだろうかって……」

「だ、だから!」

「初めてウニを食べた人はどうしてそんなこ
としたのかって、そういうたぐいの疑問なわ
けよ、うん」

「他にもあるでしょ! カキとか納豆とかド
リアンとかっ!」

「あ……そうか」

「どこがよ」

「豆もやしってさ……」

4月23日(金)
放課後、通学路
「ふふん、カンが鈍ったんじゃないの?」

「タテとヨコ、どっちがいい?」

「顔をタイヤで踏まれる方向」

「両方?」

「問答無用」

「山ほどあるわよ」

「あんたの言うことももっともだわ」

「とにかくその顔踏んでから話を聞こうじゃ
ないの」

「!」

「乗って」

「早く乗りなさいよ!!」

「後輪の軸のところに出っぱりがあるでしょ、
早く!!」

「さっさとつかまって!!」

「早く!!」

「ひぃあ!? ばばばかばかばかっ!! 肩よ肩
っ!!」

「しっかりつかまってなさいよ!!」

「じゅうたくがい、だった、からね」

「知らないひと」

「いーや、違う」

「ありえないし」

「あんたについてくわけじゃないんだから」

「むぅ……」

「あたしが先に頼む」

「コーヒー」

「なぬ!?」

「べ、別に」

「あ、あたしも……」

「……なんで同じテーブルに来るのよ」

「そんなことあるわけないでしょ」

「いらないわよ、そんな子供の飲みもの」

「ああ、あ……」

「イチゴフロートなんて人前で食べて恥ずか
しくないの? 赤なんて女の色じゃないの」

「男のくせに軟弱。いるよね、ファミレスで
喜々としてパフェ食べてる男。あたしそうい
うの吊るしたくなるくらい嫌い」

「いや、違う」

「違うし」

「ぁ……」

「なな何よ何よ!! これで勝ったと思うなよ
ぉ!!」

「い〜〜〜だっ!!」

4月24日(土)
放課後、下駄箱
「しっ」

「頭だすんじゃないのっ!」

「う〜……」

「勝手な真似するな」

「逃げる気?」

「表はダメ。こっちよ」

「この奥の山道を行けば神社に抜けられるか
ら」

「山道で二人乗りなんて冗談じゃないわよ」

「乗って」

「だいじょうぶ」

「MTBだから」

「その時は責任とってあげる」

「何それ、勝負? バカじゃないの?」

「運動したらお腹すいた。あたしは寄ってく
けど?」

「ホットドッグのセットA」

「こいつも同じもので」

「結構かけるんだね」

「ホットドッグ、好き?」

「ケチャップとか好きなんだ」

「……そう」

「ふ……」

「ふ……ふふ……」

「甘いわね」

「その程度でケチャップ好きを語るなんて、
甘すぎる」

「しょせん、あんたはその程度ってことよ」

「あたしなんかマイケチャップ持ってるんだ
ぞ!!」

「……」

「いや、だからマイケチャップ……」

「いや、違う」

「う、嘘じゃないわよ。何を根拠に」

「え……?」

「……あ゛っ」

「ぐ……」

「こうしてやる〜〜〜!!」

「これで勝ったと思うなよ〜〜〜!!」

「うわぁ……」

「まだこんなところあったんだ」

「こういうのがいいね……あたしさ、シート
敷いてお花見っての嫌い。ああいうことする
連中の気が知れないわ」

「……悪かったわよ」

「無理して食べなくてもいいわよ」

「嘘ばっかり!」

「……しつこい奴。こういう男、踏みつぶし
たくなるくらい嫌い」

「貸しなさいよ、もう!! あたしのあげるか
らっ!!」

「なに言ってるのよ!! 口の周りケチャップ
だらけにしといて……ふあっ!?」

「あ、あ、あ、あぁぁあ!?」

「あ……っと、ごめ、あ……!」

「う……あ……」

「すご……」

「わ、わかってるわよ」

「……ありがとう」

「いい場所、教えてくれて」

「あんたにしては上出来かな」

「お返しに、さ。教えてあげる」

「冷凍大判焼きのおいしい食べ方」

4月26日(月)
放課後、神社の境内→ヤクド
「……」

「やめてよ」

「あたしはもうダニエルとは関係ないから」

「とにかく!」

「あたし、おじいちゃんの言うとおりにはな
らないから!」

「ち、ち、違うわよっ!!」

「ばっ……あいつはそんな……!!」

「……そうなの。あたし、あいつのせいで変
わったの」

「もう何を言われても手遅れよ。なぜって、
あたし、身も心もあいつに捧げちゃってるか
らっ」

「……」

「えーっと……心だけ、かな?」

「とにかく、あたしはあいつの言いなり。悪
いけど、おじいちゃんの言うことはきけない」

「いちっ!」

「? ……???」

「そのとおり! おじいちゃん、よく気づい
た!」

「そう、あいつが全ての元凶!」

「たかあき……!」

「あ、まずっ」

「あーあ、よりによってこのタイミングで。
こうなったらダメだわ、うん」

「ああ、ダメダメ。こうなったらおじいちゃ
ん止まらないから」

「乗って!!」

「大丈夫! パワーアップしたらスピードが
落ちるのは基本よ!」

「ちゃんとつかまって!!」

「別に何でもない」

「家庭の問題に首を突っ込まないでくれる?」

「もうちょっと……」

「もうちょっとだけ待って。何とかするから」

「もう少し……せめて卒業まで」

4月27日(火)
放課後、神社の境内→ヤクド
「乗って!!」

「変なことに巻き込んで悪かったわね」

「でもあんたが首を突っ込んでくるから」

「とにかく、あんたにあたしが卒業するまで
生きててもらわなくちゃならないから」

「……」

「ぶっ!」

「……」

「ぶふっ!!」

「んなわけないでしょ!!」

「子供の頃、将来は何になりたかった?」

「つまみ食いできるから?」

「他には?」

「お笑い?」

「何の?」

「あたしはテニス」

「日本滅びるわね」

「太平洋のもくずだわ」

「探検家。家つながりで」

「あたしは漫画家の方かな」

「まじ?」

「今でもそう?」

「今でもそれになりたい?」

「将来の夢……なんて呼べないくらいどれも
他愛ないことだとは思うけど……」

「もしそういうのが突然全部なくなってし
まったらどうする?」

「……」

「違うわよ」

「さっき言ってた来栖川家なんだけど」

「あながち無関係ってわけでもないのよね」

「それがうちの家系なの。ダニエルってのは
役職名みたいなものね」

「他に道などなかったし、他に道があること
なんて思いもしなかった」

「無邪気だったのよね。でも、いつからだろ。
目の前に敷かれたレールに疑問を持ったのは」

「でも」

「とにかく、なれる自分にはなりたくなかっ
たの」

「しまらない話。おじいちゃんが戸惑うのも
無理ないわ」

「じゃあね」

「……ちょっと待って」

「これからは名前で呼んで」

「だから名前で呼べっての」

「だーかーらっ! 下の名前!」

「いい? あたしのことは名字で呼ばないこ
と」

「名字だったらおじいちゃんと区別がつかな
いでしょ!」

「うっ」

「くっ……」

「ああ〜〜〜!!」

「……貴明」

「貴明」

「た・・・」

「そういえばそうだったわ」

「じゃあこうしよう」

「名前の後に様をつけなさい」

4月28日(水)
放課後、ゲームセンター
「いやぁ〜、格ゲーなんて久しぶりだなぁ〜」

「ばっち来〜〜〜い! どうした、臆したか
河野貴明!」

「な、なぬ!?」

「えっ!? 今のなに!?」

「え、どうやって!?
 わ、わ、卑怯モノ!!」

「あぁああ、もおおおっ!」

「ふふふ、やっと追いついてきたわね」

「だいたい、知識のあるなしで勝敗が分かれ
るってのがいけないの」

「そんなの真の勝負じゃないわっ」

「べべ、別に欲しくないんだからっ!」

「同じじゃない」

「……」

「別に」

「何にせよその勝負、受けて立ってやるわ」

「ふふ、その前みたいには行かないわよ」

「今度の勝負はポイント制にしよう」

「赤が100点、黄色が3点、茶が2点」

「あ、あ、ダメ、そこは……あうっ」

「そんな、あ、ああっ……そこ、そこなの、
いい、そこっ」

「そこ、そのまま、ぐっと、あ、あ、イく、
イきそう!」

「あ! あ! イく、イっ……あと少しで、
あ、ああっ! もっと、もっと深く!」

「入れてぇ! もっと強くぅ! そのまま……
ま、まっすぐぅ! あ、あ、あ……ああああ
っっっ!!」

「あぁぁあああ……。バカ。あーあ、バーカ。
そこまで持って行って落とすかね」

「赤色だっつーてるでしょうが」

「だから赤色っつーてるだろ」

「まったく、口だけなんだから」

「ふん、情けない顔してからに」

「あんたのろくでもない顔を残してやる」

「なんであたしが河野貴明と一緒に写んなき
ゃなんないのよ」

「あぅあっ!?」

「な、何すんのよ!! やだ、あたしどんな顔
してた!?」

「や、やー!! 見るなーっ!!」

「え? え? わーっ、わーっ!!」

「変っ! 変すぎっ! 目の焦点あってない
よぉ〜!」

「い、いらないわよそんなの! そっちも何
しまってるのよ、さっさと捨てろぉ!」

「ふん、魔よけくらいにはなるわよ」

4月30日(金)
午前中(休み時間)、廊下
「な、なによ」

「え?」

「え? え?」

「何なのよ 罠? 罠なのね?」

「え……?」

「うん……」

「あっ……」

「あ、ありがと……」

「「あ」」

「なによ、こんなので喜ぶとでも思ってるわ
け?
 ばっかじゃないの、小学生と勘違いしてる
でしょ!
 まったく、人を見くびるのもいい加減にし
なさいよ!
 あーもう! 捨てるのも面倒くさいからも
らってやるわよ!」

5月6日(木)
放課後
「乗りたいか」

「乗りたいだろ」

「乗りたいくせに」

「今日は気分を変えて駅前に来てみた」

「何してるの、こっちこっち」

「一度、このオープンカフェで飲んでみたか
ったの」

「往来からじろじろ見られるのに一人でいら
れないでしょ?」

「? こういうの嫌いだった?」

「損……?」

「それは違う」

「わざわざ特別に場所を設けてるわけよ。暗
い店内でボソボソ食事するよりずっとお得じ
ゃない?」

「うちは夕食遅いから」
「うん」
「そうだけど」

「ん。執事の役目はおじいちゃん一人で務め
てるわけじゃないけどね」

「そーよ」

「この隠しきれない気品! 今まで気づかな
かったの?」

「他人に仕えるという発想が気にくわないの
よね」

「特定の誰かに、ってのが嫌なの」

「そうかも」

「ん〜、必ずしもそうじゃなきゃダメってわ
けでは」

「楽しいからってそれが行くべき道とは限ら
ないんじゃない? スケボーやってて楽しか
ったら天職?」

「あ−、ダメ。体を動かすのは好きだけど、
選手として食べていけるほどじゃないし」

「弓道? 拳銃の方が強いじゃん」

「だから、そういうんじゃなくって、もっと
こう……」

「おじいちゃん!!」

「いーのよ、迷子になる歳でもないんだから」

「まったくしつこいんだから……ひとの迷惑
も考えろっての」

「父さんも母さんもどうしておじいちゃんの
ことを止めてくれないんだろ」

「びたぁちょこ」

「そ、そう」

「じゃあ果肉入りストロベリーの……」

「ラージで」

「なによ」

「イチゴが入ってる分、バニラよりお得でし
ょ?」

「なによ、思いこみの激しさなら負けないん
だから」

「だってこれは……」

5月7日(金)
昼休み、食堂
「まずいことって?」

「なによ、またあたしの悪口でも言ってたん
でしょ」

「どうしたの? まだ食べ終わってなかった
みたいだけど」

「ただの職探しになってない?」

「それはそうなんだけど……
何だか普通の就職活動みたいで」

「そりゃま、わかってるけど」

「給料で悩んでるわけじゃ……
 1000円? まじ?」

「あーっ、違う違う! そうじゃなくって!」

「贅沢な悩みだとは思うわよ。行き先がある
だけマシなのはわかってる」

「うまいこと言ってんじゃないわよ、ひとを
ダシにしてっ」

「もう、あんた達と食べてたら飯がまずくな
るわ」

「え゛……?」

「いま何て……」

「わーっ、わーっ!?」

「な、な、なんで、なんでっ???」

「そういう言い方やめろぉ〜!」

「なにそれ。誰のこと?」

「知らない」

「いいや、知らない」

「いい加減、この話題から離れない?」

「……なんでよ」

「自業自得。
 いいのよ、こいつ頑丈だから」

「何の話をしてるのよっ!!」

「なにが」

「むっ……」

「むぅ……」

「ふん、もともとこんな近場で済ます気なん
てないんだからっ」

放課後、オープンカフェ
『おじいちゃん、あたしダニエルになる〜』

『ダニエルになる〜』

『なる〜……』

「むさくるしい面子」

「男二人して女の……ゴニョゴニョ……待た
ないでよ」

「図星だから殴られてるの!」

放課後、ゲームセンター
「何も言ってないでしょ」

「ちょっと見ただけだってば」

「こんなものも入ってるんだって意外に思っ
ただけよ」

「別に欲しいなんて……」

「あたしそんなこと考えてないっ!!
 別にねだってなんかいないのに!!
 勝手に勘違いして!!
 失礼な奴!!
 欲しいなんて一言もいってないのに!!」

「これだけ怒らせた以上、責任取ってもらい
ましょうか」

「ごくっ……」

「……もういいよ」

「そうそう欲しいものが取れたら商売になら
ないもんね」

「だーからもういいってばっ」

「「あっ!?」」

「理由もなくもらってばかりじゃいられない
から」

「あたしが気にするのよ」

「う〜〜〜ん〜〜〜」

「あ、これあたしそっくり」

「ね、どう?」

「気のない返事」

「こっちはたかあきに似てない?」

「おい、このたかあきめっ、トリャー!」

「うは〜、
 いきなり跳び蹴りとはご無体なぁ〜」

「口答えするか、たかあきの分際で! とり
ゃとりゃとりゃ、空中連続蹴りぃ!」

「ぐぁ〜! やーらーれーたぁ〜〜〜! へ
へぇー、参りましたお許しくださいぃ〜!」

「わっはっはー、正義は勝ぁーつ!」

「あんたのレベルに合わせてあげただけよ」

「これください」

「……あれ、ちょっと待って」

「べべ別にあたしに似てることは何の意味も
ないんだからっっ!」

「え?」

「悩んで損した」

「こっちあげる」

「いやよ、お互いのを持ってたら恋人同士み
たいじゃないの! あたし、ペアルックとか
やってる奴ら引きずりたくなるくらい嫌いな
んだから!」

「なーにとろとろ歩いてるのよ!」

5月8日(土)
昼前の授業時間、屋上
「なーに寝てんのよ」

「高いところで空を見上げるのっていい気分
だよね」

「そんな悩みも大したことないように思えて
くるよ」

「何か見えた?」

「もーっ、そういう意味じゃないのに」

「なに言ってんのよ、体育は二クラス合同で
しょ」

「……」

「こら寝るな」

「なに、はないでしょ」

「よく見なさいよ」

「つけてるのよ」

「リップよ」

「学校なのにそんなごってりと塗れないでし
ょ」

5月10日(月)
放課後、水族館
「何ごとも経験よ」

「自分の隠れた才能との出会いがあるかも」

「なによ」

「こっそり尾けることを学習したみたい」

『おじいちゃん、あたしダニエルになる〜』

『ダニエルになる〜』

『なる〜……』

「うん……ヒゲが痛かった」

「……」

「行こっか」

「大水槽ってどこ?」

「こいつら明らかに仕事してないね」

「そう? 立ってるだけならサルでもできる
よ」

「ああいうの見ると無性にむしりたくならな
い?」

「嘘。なるくせに」

「絶対そうだ」

「早っ!! ペンギン早っ!?」

「あいつら、やっぱりさぼってやがった。ち
ゃんとペンギンしろっ」

「見た目かわいいと思って……」

「うん、カメ」

「べっ甲ってカメだっけ?」

「……」

「こっちのこと気にしてる?」

「あんたじゃなくてカメ」

「いや、さっきこっち見てたね」

「そんなことない。あたしのこと……あ!
いま見たほら見た! ちらっとこっち見た!」

「間違いない、あたしたちのこと気にしてる
よ」

「ニニンがシ、サンゴジュウゴ、ヒチヒチシ
チヒチ……」

「わっ!?」

「見せつけてるよ、絶対」

「こっちが自分たちを見に来てるってわかっ
てるんだ」

「ほら、またやった。人間を驚かせて喜んで
るのよ」

「露出趣味みたいなものかな。コートの前を
がばっと開くやつ」

「だって、奴ら裸だし」

「あいつは変態と違うね」

「ああいうワラワラしたのが覆いかぶさって
きたら……」

「お腹のこういうの」

「思い切り触ってみたい」

「両手で」

「あのワラワラ、
 全部塞いだら呼吸できない?」

『おじいちゃん、あたしダニエルになる〜』

『ダニエルになる〜』

『なる〜……』

「あ、ちょっと待って!」

「あれ、サメっぽくない!?
 ヒョウ柄のやつ!!」

「……でかい」

「いや、もっとでかいね」

「わ、本物!?」

「他の魚は大丈夫なのかな。あんなのと泳い
でて」

「周り全部お魚……」

「食べ放題?」

「そしてフカヒレ」

「ん、んー。水族館にしちゃ満足したわ」

「なんでよ」

「はぁ、思ってたよりもよかった」

「だからなんで」

「もうちょっと見てく?」

「お、察知した」

「掃除機みたい……」

「周りの魚も何匹か巻きこまれてる気がしな
い?」

「係員も足を滑らせたらあの口に腰まで吸い
込まれて……」

「ちょー巨大なフカヒレ」

「うぐっ」

「ふっ……そういえばそんな話もあったかな」

「別に忘れてたわけじゃないんだから」

「もうお嫁さんでもいいかな、とか」

「もらい手なんていくらでもいるわよ。言っ
とくけど、あたし尽くすタイプなんだから」

「どうやって?」

「何それ、調子のんじゃないわよ。なんであ
んたなんかと」

「べ、べつにやろうと思えば」

「だからなんであんたなんかに……」

「わ、おじいちゃん!?」

「誰が口先だけよ! お望みなら誓いの言葉
でも愛の儀式でも結んでやるんだからっ!」

「伝説……」

「知ってた?」

「うん……」

「ん……」

「……また明日」

「……?」

「え……?」

「あ、ちょっと待って!」

「こっちはエレベーター動いてたよ」

「……」

「よかったね、あんたたち」

5月11日(火)
昼休み、屋上
「うん?」

「べっつに」

「なんだろ、もう焦りとか感じなくなったか
な」

「本当は将来なんて先の話はどうでもよかっ
たのかも」

「自分がどうして生まれてきたのか、それを
体で感じられる何かが欲しかったのかな」

「うん」

「……ひとがまじめに話してるのに」

「……」

「……」

「別に逃げたりしないわよ」

「思い切りひっぱたくかもしれないけど」

「……」

「え……」

「し、知ってたの……?」

「「い゛っ!?」」

「あー、もう許せない!!
 このとうへんぼく!!」

「今日という今日は決着つけてやる!!
 勝負よ!!」

「さあ、あたしに追いついてごらん!!」

放課後、昇降口
「ひっ!?」

「あ、あ、違う、何でもない」

「いや、ほんと、ごめん」

「ちょっと、ちょっと用事が」

「いや、何でも、何でもないっ」

5月12日(水)
昼休み、屋上
「でも今さら言えないよねぇ……」

「あれだけ夢だ将来だって言っといて」

「うわたっ!?」

「あああんたが来てどうするのよっ」

「そうじゃなくてっ、あたしがここにいるこ
となんでわかったの!?」

「なんで、たったそれだけの理由で屋上まで
来れるわけ?」

「うっ……」

「……」

放課後、廊下
「……よ」

「今まで世話になりっぱなしだからさ」

「そういうわけで、たかあきの分際で図にの
ってるんじゃないかと」

「ここらで立場の上下を再確認するためにも、
ひと勝負」

「許可は取ってあるわよ」

「授業でよ」

「他にもバレー、バスケ、サッカー、たまに
マラソンとかもあるけど基本的に週替わりで
色々」

「文句言ってないでネット張って」

「うっし、完了。それが気に入らないならど
れでも好きなの選んでいいから、お先にどう
ぞ」

「……」

「マイラケット……?」

「……それにするの? 本当に?」

「こっちの尖ったやつの方がよくない?」

「表面が粒々のもあるけど。
 ほら、こんなにラバーが分厚い」

「いい? 1ゲーム11点先取、ジュースあ
り。1試合は5ゲームだかんね」

「1試合5ゲームってのは3本取った方が勝
ちって意味なの!」

「……あのさ」

「勝ったらあんたに言ってやることがあるの」

「試合が終わったらね。這いつくばったあん
たを見下ろして言ってあげる。
 はい、カンカンカーン! 試合開始!」

「ふりゃ!」

「ほらほら、這いつくばってないで次いくわ
よっ」

「二回ずつ交代なのっ! それがルールなの
っ!」

「違うっ!」

「公式ルールだってばさ!!」

「ふっ!」

「あっ!」

「くのっ!」

「やったね、二点先取♪」

「うふふ、
 じゃあその言葉証明してみせたら?」

「……ぷっ」

「つっ!?」

「ちょっとスピンを掛けすぎただけなんだか
ら!」

「うるさい! 一点取ったくらいで騒がない
でよ!」

「自分でやれ!! セルフサービスよ!!」

「だからまだ一点だけでしょうがっ!!」

「……」

「サービスエース!」

「んあっ!?」

「くっ……卓球やってたの!?」

「さっさと球よこせ!!」

「カタカナに読みかえるなっっ!!」

「なに、よ! こっちは忙しいんだか、ら!」

「な、なによ」

「……」

「そんなのどっちでもいいでしょ!」

「いーからっ!! 行くわよ!?」

「ノーガードだってガードしてないじゃない
の」

「それじゃ、セルフサービスもありありって
ことで」

「ぬぅ……」

「バーの定義って何だっけ?」

「……いや、何でもない」

「なによ」

「言いなさいよ。この方が気になるわ」

「そうよ」

「そうだけど」

「習慣よ、しゅうかん」

「まったく、くだらない」

「あ゛あ゛あ゛あ゛〜〜〜!! 余計なこと言
うからぁ〜〜〜!!」

「うるさいうるさいうるさーい!! さっきか
ら卑怯な手ばっかり!!」

「え……」

「え、あ、それは……べべ別に混乱させよう
ってつもりじゃ……そ、そんな、大げさに取
られても……」

「とととにかく続きいいい行くわよ」

「っ!?」

(『ちゃんとエスコートすること』)

5月14日(金)
放課後、校門前
「……」

「何の用ですか」

「あなたこそあたしの何を知ってるの?」

5月15日(土)
放課後、ヤクド
「……っ」

「ついてこないで」

「ちょっとだだをこねてみただけ」

「何かが変わるなんて思ってなかった」

「思うはずないじゃないの」

「だいたい、こんな近場で済ます気なんて最
初から……」

「あんたなんかいなくても、あたしは一人き
りでやっていける」

「その方が幸せになりそうでしょ」

「ちが……」

「……」

「……もう二度と思い出さない」

5月17日(月)
放課後、図書室
「……よろしく」

「棚から本を降ろすだけでしょ」

「……何をよ」

「うっ、う……」

「なによ」

「なに? 今は仕事中よ」

「え?」

「ど、どれ?」

「あっ」

「〜〜〜……」

「べべつに何でもないから」

「ああっ!?」

「クリップ吸ったのよ」

「気づいてると思ってたから」

「……けほっ」

「いたいたたっ」

「……かかった」

「つば、かかった」

「顔にかかった。
 あたしの顔に、あんたのつばが。
 つばが顔にかかった。あんたのが、あたし
の顔に。
 あんたのつばがあたしの顔にかかった」

「ついて来んな! 着替えるのよ!」

「覗くなっ!!」

「何よ」

「ダメなものはダメ」

「呼び捨て」

「どうして?」

「陽差しを反射してたから」

「そんなに悪くはないけど……」

「初対面で失礼なやつ」

「ついて来ないでよ、もう!!」

「すねてなんかいない!」

「そっちこそどこまでついて来る気よ!」

「あんたなんかとは最初から何もないわよ!」

「あんたのそういうとこ踏みつぶしてやりた
いくらい嫌いっっ!!」

「体操服で制服の男子と並ぶのは恥ずかしい
でしょ!」

「やめろついてくるな変態っっ!!」

「何よ、言ってみなさいよ」

「へっ、本当のことが聞いてあきれるわ」

「ちょ、ちょっと、やだ、なに言い出すつも
りよ……」

「なに!? なに!? 急に、そんな、へへ変な
こと言わないでよ!」

「ちょ、それって……こ、こんなところで言
われても……だからあたしはあんたのそうい
うところが!」

「……!」

「〜〜〜!!」

「ぁ……」

「は、はなして……」

「……!!」

「……」

「え……? なに?」

「待っ……!」

「いや、ちがう、これは……」

「うわぁ!?」

「な、な、なな何するのよっっ!」

「こんなところ誰かに見られたらっっ!」

「あたしが困るの!!」

「ちょ、ちょっと!!」

「な、な、なな、なに見て、こんな、顔くっ
つけて!!」

「ヘンタイ!! バカ!! スケベ!! いやらし
いっっ!!」

「〜〜〜!!」

「男なんて男なんて男なんて!! 結局それじ
ゃないの!!
 好きとか愛とか恋とか!! いくら奇麗ごと
言っても女をものにすることしか考えてない
んだから!!
 あんただって、どうせ、口ばっかりでやれ
ば気が済むんでしょ!! そうすりゃ次の日か
らさっぱりした顔で登校してくるに決まって
る!!」

「そうよね。だってあたしがあんたに好かれ
るわけないし。あんたとはののしりあってき
ただけなんだから。
 あたしも……あたしなんて中身はおそろし
いくらい空っぽで……それで誰かに好かれよ
うなんて滑稽でしかないわ」

「……聞いてるの」

「……」

「いいわよ、やんなさいよ。それであんたも
満足するんでしょ。あたしたち、もうこれっ
きりだからね」

「え……」

「あ……」

「さ、さげた……」

「ちょ、ちょ……! わかってるの!? あた
しとやっちゃったら、もう……」

「なぬ」

「な……!
 なによそれぇええ〜〜〜!!!」

「いや! お尻やめて!」

「は、離して……」

「だ、だめ……」

「明日……。
 お願い……今は……」

5月18日(火)
登校中
「わ、わ、あわあわ」

「どわ!?」

昼休み、食堂
「べ、別に……」

「め、めがね……!」

「眼鏡、かけてなかったから……それで気
づかなかったんだと思う、学校に来てたの
を……」

「そうなのよ、うん」

「「え?」」

「そ、そう」

「その、販売店の手違いで、修理の発注が通
ってなかったの……!」

「しかも修理の部品は海外のメーカーに発注
しなくちゃならなくて! そこでまた行き違
いがあって、販売店から再発注をかけること
になって!」

「それで部品は届いたんだけど、それが発注
した部品と平気で違ってて!
 それで再々発注、挙げ句の果てには修理で
ネジ山をなめちゃって、結局フレームまるま
る交換ってことになって……!
 さすがにこれは他の店舗の在庫から回して
もらったんだけど。そこはチェーン店の強み
かな。ここまで来ると他の眼鏡をかけたら負
けのような気がして、だから……つまりそう
いうこと」

「そうなの」

「眼鏡なしだって意外と長所もあるのよ」

「嫌なものは見えていない振りをすればいい」

放課後、図書室
「な、なに?」

「なにそれ……当たり前じゃないの」

「……」

「〜〜〜っ……」

「あのさ……」

「ちょ、ちょ、違っ、
 なに勘違いしてるのよ!」

「あ、あのさ! 決めたからっ!」

「違っ、だ、だから!」

「将来のこと。決めたから。うん」

「え?」

「か、歌手」

「ち、違うってば! 童謡の!」

「なぜ言い直す」

「あのさ、お母さんがね、よく聞かせてくれ
た子守唄があってさ」

「子供心に和んだというか、そのこと急に思
い出して、そしたら、ささくれだった気持ち
も安らいできて」

「だからさ、どうせならこんな気持ちをみん
なに……」

「あたしが分け与えるの〜♪」

「あ、あ……コホン」

「そゆことだから。うん」

「もう伝えた」

「あんたに心配してもらわなくてもちゃんと
自分で出来るんだからっ」

「……」

「なに見てるのよ」

「こっち見ないでよ」

「……先に使う?」

「その間、どっか行ってるから」

「機械にそんなこと関係ないわよ」

「唐突にやって来てなに訳わかんないことを
っ!」

「なによ」

「な、なによっ」

「やめてよクスクス笑うの、気持ち悪いっ」

「どうかした?」

「……ふん」

「……はい」

「……それのどこがいけないの」

「得られるものが同じなら、楽な方がいいに
決まってるじゃない。それとも苦労は買って
でもしろって?」

「どっちだって同じよ」

「でも、やっぱりあるじゃないの。勝ち組・
負け組って」

「それじゃあ、死ぬ前に大切な人が側にいて
くれればいいの? 他に何もいらない?」

「何よそれ」

「……」

「わからない」

「何もないよりはましだと思うけど……」

「そこは決めつけるのね」

「ふふ……」

「ん、んっ!」

夜、ツインビル
「本当のあたしはどっちだと思う?」

「……なんであんたがここにいるの」

「……そっか」

「おまじない、本当だったんだね」

「それで、どうするの」

「また、あたしを連れ戻す?」

「どうして」

「あたしが苦しんでること知ってるのに、ど
うしてあたしを連れ戻そうとするの」

「……」

「……迷惑よ」

「ひとの迷惑も考えなさいよ」

「嘘じゃない」

「な、なにするの!?」

「違う!!」

「違う違う!!」

「なんでそう思うのよ!!」

「っ……!!」

「あー、そうよ!! あんたとバカやってた頃
は楽しかったわよ!!」

「だって!!」

「だって……だってだって!!」

「今さら、そんな……」

「あほぉ!!
 あほーっ!! あほーっ!!
 このあほーーーっ!!!」

「台なしにしたのはあんたじゃないの!!
 どあほーーーっ!!」

「もうやめてよ!!
 どうしてそこまでするの!?」

「……!!」

「うっ……ぅ……」

「だって、言えないじゃない」

「将来が見えないって、話を、してる時に」

「たかあきのことが好きだなんて」

「踏んだり蹴飛ばしたりしてたのに、好きだ
なんて」

「でも、一度でも勝つことができたら、勇気
を出して言ってみようって」

「思ってたのに」

「……ばか」

「いつの間にか、胸の中から消えなくなって
た。
 たかあきのこと、もう消せなくなってた。
なくしてから、恋だってようやく気づいた」

「ただ好きなだけじゃないって」

「遅れてなんか、ない」

「んっ……!」

「ぷはっ、そんなに押しつけられたら息でき
ない」

「あたし、すごい秘密を知ってるよ」

「でも、それはずっと秘密」

エピローグ
「おーまーたーせーっ!!」

「途中で自転車のチェーンが外れたの! 男
が30分くらいでガタガタ言わない!」

『負け続けだったのはメガネがなかったせい
だからねっ!』

「うん」

「ちゃんと自分で言いたいから」

「そんな深刻にならないでよ、進学させてく
ださいって言うだけなんだから」

「もしダメって言われた時のセリフも考えて
あるの」

「それならお嫁に行きますって!」

愛佳シナリオ
4月30日(金)
午前の授業(休講)中、図書館
「っっ!?」

「今日は忙しいんだから、あんたの相手して
る暇なんてないわよ」

「ばっ、違うわよ!!」

「ち・が・う!! プレゼントなの!!」

「……そういえばあんた、愛佳と最近仲いい
よね」

「でも、まだ教えてもらってないんだ」

「ふふん」

「愛佳の誕生日、あしたなのよ」

「……恥ずかしい奴」

「愛佳が傷つくような嘘はつかないわよ」

「教えてあげたんだから、少しは気を利かせ
てあげなさいよ」


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