A. 今がチャンス!おもむろに薙に向かって名刀千鳥を振り降ろした。

ガキィィン、鋼と鋼のぶつかり合う音がした。
が、さすがは万葉、そして名刀千鳥!
並みの人間、そして並みの刀なら斬り付けた瞬間に刀はこなごなに砕け、斬り付けた者の腕は折れるかくじくかしただろう。
だが刀身に、万葉の腕に振動が走りながらも、万葉と千鳥は傷一つ付いていなかった。

「やるわね。」
と、万葉が二撃目を繰り出そうと構えた時、

「んもぉ、くすぐったいなぁ。折角いい気持ちで寝てたのにぃ。」
薙が目を覚まし、大きく伸びをした。

万葉は斬りかかるタイミングが掴めずじりじりと後ろへ下がる。

「ママ、今日はたっぷりお外でうっぷんばらしして疲れたからゆっくり寝かせてよ。
ママの相手なら明日してあげるから。(はぁと)」

「う、うん。わかった…。じゃあお休み。」
薙の言葉にビクッとしながらも万葉は平静を装ってそう答えた。

先ほどの言葉通り相当疲れているのかすぐに薙は眠ってしまった。
薙を除けば地上最強である万葉を前にこの余裕である。
この時点ですでに万葉の負けは決定していたと言ってよい。

(とりあえず今日は助かったの?
でも明日になれば……。
ああ、『武さんと添い寝』がまた半年伸びちゃうのぉ?(涙))

テレビからは「去りゆく君」が流れていた。


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