C. この寝顔がたまらなく可愛くいとおしかった。

万葉は無意識のうちに薙の元へ駆け寄り、抱きしめていた。
(こんな可愛い娘を無き者にしようとは、なんて愚かなことを考えていたのかしら。)

抱きつかれる感触で薙が目を覚ます。
「ん、ママ?」

「薙ちゃん、ごめんね。ママ、自分のことばかり考えて。娘に嫉妬するなんて母親失格だわ。
それにあなたを殺したりしたらそれこそ武さんの気持ちは私から離れていってしまうのに。」

「ママ、なんか勘違いしてない? 私を殺すってどうやるっていうのよ?」

「え? どうって、三巳でも呑んだら殺れるかなって…。」

「甘いわね。幕末で私が折られたのは信吾パパが頼りなかったからよ。
自分で自分を扱えば無敵なのよ。うふふふ(はぁと)」

いつのまにかテレビからは『黄泉比良坂』が流れていた。
そのBGMと薙の邪笑の浮かぶ顔を見て、最後の「うふふふ(はぁと)」がどういう意味かわかるまでに万葉は時間がかからなかった。



コメント
本当は真之介や鷹久より信吾の方が頼もしそうなんですけどね。


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