アクアブルーの少女 その3

 それから何日か経った日の昼休み、浩之は購買部へ向かい廊下を走っていた。

(くそっ、出遅れちまったぜ。これじゃカツサンドもウィンナーロールも無理だな…。今日は食堂にするか? いや、急げばまだ間に合うかも…)
などと考え事をしながら食堂の方へ向けさらに加速した浩之は、前から来た女生徒に気付かなかった。

バタタタン…
2人のぶつかる鈍い音。女生徒の持っていた手提げが床に転がる。

「いつつー。悪い悪い。つい考え事してて……、あっ」

 起き上がった浩之はまだ倒れている女生徒の方を見て彼女が岡田であることに気付き、そこで言葉を止める。

「…岡田だったか。すまねぇ、ちょっとよそ見してた。完全にこっちの責任だな。立てるか?」

「う、うん、大丈夫…」
 と立ち上がろうとした岡田だったが、うまく立ち上がれず、また倒れてしまう。

「おい、大丈夫かよ。保健室行くか?」

「ううん、平気…」
 岡田は再び立ち上がろうとするが、やはり立ち上がれない。

「全然平気じゃねーじゃねーか。保健室連れてってやるよ。
 あ、これお前のだよな?」
 浩之は床に落ちていた手提げを拾い岡田に尋ねる。

「うん、ありがと…」

「よしっ、じゃ肩につかまれ」
 ちょっと戸惑っていた岡田を肩にかつぎ、浩之はなんとか保健室まで連れて行った。

 保健室の前でノックし声をかけたが応答がない。

「誰もいないのか…しょうがねーなあ」

 ドアは開いていたので部屋の中に入り、岡田をベッドに寝かせる。
「しばらく横になってればよくなるだろ。ホントに悪かったな」

「ううん。ありがとう」

「さてと、じゃあ俺は行くかな…」

「あ、藤田君、お昼まだなんでしょ?」

「ああ、まあな」

「…よ、よかったらだけど… あたしのお弁当食べる?」

「……え?」

「多分全然足りないと思うけど、よかったら…」

「いやぁ、そう言われてもなぁ…」

「あたし今食欲ないし、どうせ食べないから」

「ホントにいいのか?」

「うん、いいわよ。 あっ、さっき転んだときに落としたから、ちょっと形くずれてるかも…」

 と言いながら、岡田は手提げの中から、小さな弁当箱を取り出した。


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